ただのサイコホラーではなかった!
美女が監禁される映画と聞くと、サイコホラーのイメージを強く持つと思いますが、実際にそうした部分がありながらも、『10クローバーフィールド・レーン』は違った展開を見せていく映画です。
うまくやらないと物語が破綻してしまう危険もありますが、こうした手法もアリなのだな、と思わせてくれる映画に仕上がっています。
有害物質で空気が汚染されている?
ミシェルは車の運転中、喧嘩した恋人からの電話に気を取られてしまい、崖から転落してしまいます。
ところが、目が覚めてみると、見知らぬコンクリートの部屋に監禁されていることを知ります。そこに初老の大男ハワードが、やって来ます。
ハワードによると、地上は何者かによって核兵器か化学兵器の攻撃を受けたらしく、有害物質で空気が汚染されているため、外には出られないのだと言います。
ミシェルに下手な嘘を吐いて監禁しようとしているのか、それとも本当のことを言っているのか、最後の最後まで分かりません。
謎が二重構造になっている作品
『10クローバーフィールド・レーン』の作品が巧妙だと思うのは、謎が二重構造になっているところです。
本当は、「地上で何が起きたのか?」という点が一番の謎なのですが、ハワードという妖しい大男との奇妙な監禁生活によって、一旦、それを忘れさせられてしまいます。
ハワードは本物のサイコ男なのか、それとも本当は親切な男なのか?という、目の前で起きている謎に焦点が当たるため、それはそれでおもしろいし、物語に引き込まれていきます。
しかし忘れた頃に、一番の謎が最後にドーン!とせまってくるので、まるで不意打ちを喰らったような衝撃を受けます。あまりの急展開に、頭がぽかーんとしてしまう人もいるようです。
突き放したような独自の世界観が魅力
『10クローバーフィールド・レーン』の舞台が地下シェルターという密室のため場面の切り替わりがなく、登場人物も少ないので、普通ならば途中で退屈なシーンが出てしまいます。しかし、この作品は退屈することなく観られました。
これは独自の世界観の演出と、俳優の演技力によるものだと思います。また、何気ないシーンでも、実はあとの話に繋がっていることが分かります。
未解決のまま残された謎や、そもそもの成り行きも不明のまま終わるなど、どこか突き放されたような印象も受ける作品ですが、それが独自の世界観の魅力にも繋がっています。
恐らく、製作者のJ.J.エイブラムスは、そうした謎の部分においても、ちゃんと設定はしていると思います。あえて見せない・教えないという手法によって、逆に好奇心を煽っているのではないでしょうか?
ちなみに、前作の『クローバーフィールド/HAKAISHA』は、最初の発表では内容や作品名すら明かさず、ショッキングなビジュアルだけを見せるなどして、巧みなプロモーションをして成功を収めています。
J.J.エイブラムスは、宣伝の才能にも長けているようです。
『10クローバーフィールド・レーン』では、最後の展開に賛否両論があるのも事実ですが、私は受け入れられましたし、十分に楽しめました。観ていない人は、ぜひご覧ください!
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