この動画は、2015年8月から10月にかけて、探査機ドーンがケレスの上空1,450kmの近距離から撮影した画像を編集して、作成されたものです。
今までは詳細が分からなかった地表が、今回の動画では、より明確に見ることができます!
ケレス地表の「謎の光点」の正体
少しおさらいをしておくと、火星と木星の間には「小惑星帯」と呼ばれる領域があります。準惑星ケレスは、その中にあって最大の天体となります。
直径は約950kmあり、これは月(直径3,474km)の1/3弱の大きさに相当します。
また、準惑星の定義には、「それ自身の重力によって、球形になれるだけの質量を有するもの」などの条件があります。
ちなみに冥王星は、以前には惑星の扱いでしたが、現在では惑星の条件を満たしていないとして、準惑星に区分されています。
さて、今回のケレスの映像では、表面の物質のわずかな違いもわかるように色が強調されています。ちなみに、青い影に見える箇所には、若く新鮮な物質が存在していると考えられているそうです。
ケレスに謎の2つの光点が発見される
こちらは2015年2月、探査機ドーンによって、ケレス地表に謎の2つの光点が発見された時の写真です。
以前から、ハッブル宇宙望遠鏡からもケレス地表の光は確認されていたのですが、探査機ドーンによって「何かしらの物質」であることが判明したのです。
しかし、この段階ではまだ遠距離からの撮影であったため、詳細の確認はできませんでした。「火山活動ではないか?」「氷や塩ではないか?」「何かしらの鉱物ではないか?」などと、様々に憶測されていました。
また、UFO研究家やオカルトファンの間では、UFOの秘密基地、あるいは地表に建設された都市ではないか?とも囁かれていました。
1,470キロの近距離から撮影
こちらは2015年8月~10月に撮影された最新の写真(ケレスから1,470キロ離れた距離から撮影)です。
ずいぶんと鮮明に確認することができるようになりましたね!
謎の光点が発見されたこのクレーターは、ケレスの北半球に位置し、その直径は90km程度、深さは4km程度あります。現在では、「オッカトル(Occator)」と名付けられています。
NASAの研究チームによると、オッカトルが形成されたのは、比較的最近の約78万年前になるとのことです。宇宙では、78万年前であっても最近の出来事になるのですね。
さて、謎の光点ですが、前回の写真よりも近距離から撮影されているため、ようやく正体が明らかにされつつあります。
ケレス謎の光点の正体
ドイツ・マックスプランク研究所などの国際研究チームが、探査機ドーンの観測データを分析した研究報告を、英科学誌ネイチャー電子版(2015年12月9付)に発表しています。
研究チームは、謎の光の正体を、以下のように推測しているとのことです。
- 光点は、幅10キロ、高さ500メートルほどの岩である。
- この岩は、硫酸塩マグネシウムに近い塩と氷でできている。
- この岩に太陽光が当たると、水分が蒸発して塵状の煙が立ち上る。それに太陽光が反射して、光って見える。
隕石の衝突により、ケレスの地下に眠っていた塩と氷の一部が地表に露出し、その蒸気が太陽光を反射して光っていた、ということなのだと思います。
但し、今回の国際研究チームの発表もまだ推測の段階なので、今後の科学的分析によって、さらに正体が明らかにされることになります。
写真を見ると、少なくともUFO基地や地上都市ではなさそうなので、オカルトファンにとっては残念ですが、謎が解明されていくことは喜ばしいことだと思います。
ケレス地表の「ピラミッド」の正体は?
ケレス地表の「謎の光点」に続いて、新たに発見された「ピラミッドのような構造」も大きな話題になりました。その正体は何だったのでしょうか?
ケレスにピラミッドのような構造物?
こちらは、ケレス地表に発見されたピラミッドのような構造物です。アメリカ航空宇宙局(NASA)が2015年6月22日に発表しています。
謎の光点に続いて、このような正体不明の構造物も発見されたため、当初は「宇宙人が関与しているのではないか?」とネットでも話題になりました。
ピラミッドの正体が解明される
こちらは探査機ドーンがその後、さらに近距離から撮影した写真です。
ピラミッドに見えていた構造は、ドーム状であることが判明し、今では「アフナ山(Afuna Mons)」と名付けられています。最も急な側の高さは5km、平均4kmで、山の直径は20kmだそうです。
結論を言えば、ピラミッドではありませんでした。こうなると、「ただの山を、ピラミッドだと騒いでいただけか」と思われるかもしれません。
但し、NASAも当初は、ケレスにアフナ山のような地形があるとは、誰も想像していませんでした。実は今も、この山がどのようにして形成されたのか説明できないようです。
また、写真を見れば分かりますが、このアフナ山の斜面にも光る物質が確認されています。これがオッカトルの光点と同じ物質なのかどうかは、まだ判明していません。
さらに太陽系誕生の謎に迫る!
探査機ドーンがケレスの周回を開始したのは2015年3月6日であり、今現在で一年が過ぎました。この間、予想していなかった発見が次々にあり、研究者たちを驚かせ続けているのだそうです。
ドーンの目的は、太陽系初期の状態を残していると考えられる準惑星ケレスと、小惑星ベスタを調べることで、太陽系誕生の謎に迫ることです。
ドーンは約1年半ケレスを観測した後、ミッションを終了する予定になっていますが、今後も驚くような発見と、研究成果に大いに期待したいと思います。