インディ・ジョーンズの映画公開で明かされた真実
2008年、映画『インディ・ジョーンズ』が19年振りに公開されました。『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』です。
そのクリスタル・スカルのモデルとなったのが、ヘッジス・スカルなのです。
今までにインディ・ジョーンズの舞台は1930年代でしたが、今回は50年代になっています。その理由を記者から訊かれて、ジョージ・ルーカス監督は以下のように答えています。
有名なミッチェル・ヘッジスのクリスタルスカルというものがある。この水晶ドクロが有名になったのが1950年代だったので、今回は映画の年代をあえて1950年代に設定した。
ヘッジス・スカルは、あの大人気映画のモデルとなり、時代の設定まで変えてしまったのですから、やはり大きなパワーを持っていることに間違いありませんね。
しかし、映画によって再度脚光を浴びたことにより、クリスタルスカルの真実も、遂に明らかにされることになりました。
博物館所蔵のクリスタルスカルの解析結果
実は、映画の公開とともに、米国考古学協会の機関誌「アーケオロジー」が、クリスタルスカルの特集号を組んでいます。
その中で、ヘッジス・スカルは、大英博物館にあるブリティッシュ・スカルの複製と考えられると指摘しています。ということは、大英博物館の水晶ドクロが本物だったのでしょうか?
しかし、解析してみたところ、ブリティッシュ・スカルの表面からは、近代にならないと使われない合成研磨剤が検出されました。
円盤型の回転工具による加工痕があったため、ブリティッシュ・スカルは、ヨーロッパで19世紀後半に製作された物であると考えられています。
また、フランスのパリ人類学博物館でも映画の公開に合わせて、所蔵するパリス・スカルを公開しました。残念ながら、こちらも解析してみた結果、ドクロの表面に研磨跡が発見されました。
当初のパリス・スカルは、アステカ文明の遺跡から出土されたと言われていましたが、ブラジル産の原石を使って19世紀後半にドイツで作られた物である、と判定されています。
▲ブリティッシュ・スカル
▲パリス・スカル
ヘッジス・スカルも偽物だった?
伝説のクリスタルスカルが次々に出自が暴かれる中、2008年4月、ヘッジス・スカルも、スミソニアン研究所で電子顕微鏡を使った解析が行われました。
その結果、ダイヤモンドの研磨剤と見られる跡が発見されたとのことです。
現在の技術でも作れないと言われていたクリスタルスカルでしたが、現在の技術であれば作れる偽物であったのです。
近代に作られた工芸品を、古代遺跡から発見されたと触れ回っていたのならば、残念ながらヘッジス・スカルもオーパーツではなかったことになります。
しかしながら、もう少しだけ、クリスタルスカルの謎に踏み込んでみたいと思います。
クリスタルスカルに残されている疑問
判定結果だけで言えば、クリスタルスカルは偽物であったという話で終わってしまうのですが、それでも残されている疑問があります。
最後に、この点について触れておきたいと思います。
なぜマヤ遺跡で発見したと言ったのか?
まず、ヘッジス・スカルの発見者とされたヘッジス親子は、なぜマヤ文明の遺跡で発見したと言ったのでしょうか?
よくよく考えてみると、その理由が見当たらないのです。
そもそも当事者のヘッジス自身が、発見したドクロについて、なぜか触れたがっていませんでした。名声を得たかったのならば、世紀の大発見として著作に発表してもよかったはずです。
また、高値で売り飛ばす目的であったならば、とうの昔に売り払っていたはずですが、養女のアンナは生涯、この水晶ドクロを大切に保管しています。
名声を得るわけでもなく、高値で売り飛ばすわけでもなく、あとで調べれば分かるようなウソを、なぜ吐いたのかが分かりません。ここに疑問が残ります。
ちなみに、アンナは最期までマヤ遺跡で発見した本物であるとの主張は変えていません。彼女は2007年に大往生し、100歳の長生きをしています。
ひょっとすると、これはクリスタル・スカルのパワーのおかげだったのかもしれませんね。
生前のアンナと、ヘッジス・スカルです。まるで我が子のように、非常に大切にしている感じが伝わってくる写真です。
こんなに愛おしそうにしている顔を見ると、周囲の人間たちが、「本物だ」「偽物だ」と騒ぐのも、なんだか野暮な気もしてきますね。アンナおばあちゃんの生涯の宝物であることに違いはありません。
クリスタルスカルは、誰が何のために作ったのか?
もう一点、そもそもなぜ、このような精緻なクリスタルスカルが作られたのでしょうか?
近代の技術であれば加工できると判明したものの、実際には、誰が何のために作ったのか?という点については、謎のまま残されているのです。
実は、パリス・スカルには、頭の天辺から底辺まで、垂直な穴が空いています。この点から、ドクロを十字架に通して、キリスト像の下に配置するために作られたとも考えられます。
ドクロは死を意味します。磔にされたキリスト像の下に置くことで、キリストは死を超えたという意味になるのです。
▲キリスト像の下を拡大して見ると、ドクロが描かれています。
しかし、水晶ドクロを使用したキリスト像が、今までに作られたことがあるのでしょうか? あるならば、クリスタルスカルの謎もすぐに解明したはずなのですが、調べても出てきません。
また、ヘッジス・スカルにおいては、下顎が外れる構造になっています。キリスト像を装飾するために、そのような複雑な構造にする必要はありませんね?
秘密結社の儀式に使われた法具か?
クリスタルスカルは近代に作られたものだと言っても、精巧に出来たクリスタルの工芸品なので、庶民が趣味で持てるものではないでしょう。
全くの憶測に過ぎませんが、どこかの秘密結社や宗教組織が、儀式や秘儀に使う目的で、水晶ドクロを作らせたのかもしれません。
本来ならば、世に出てはいけない門外不出の法具であった可能性はありますね。
また、本物は別の場所に大切に保管されており、世に出ているクリスタルスカルは、実は世間の目を眩ますための模造品という見解もあるようです。解析時に、偽物とすり替えられた可能性もありますね。
人類の叡智を秘匿にしておきたい勢力が、今もどこかに本物を隠しているのかもしれません。
ヘッジスは著作の中で、水晶ドクロの出自に関して「わけがあって言えない」とお茶を濁しましたが、背景には、そのような裏事情があったのでしょうか?
クリスタルスカルは、いったい誰が何のために作ったのか、この点が分からない限り、全ての謎が解けたとは言えないのだと思います。