マイナスイオンがエセ科学と言われている理由
前ページでは、マイナスイオン家電がブームとなり、バブルが弾けるまでの流れを紹介してきました。
研究者によっては、「マイナスイオンの健康効果には科学的な根拠がなく、エセ科学である」と結論付けでいますが、具体的には、どのような批判がされているのでしょうか?
以下、マイナスイオンがエセ科学とされる理由を、分かりやすく説明していきます。
マイナスイオンの研究報告は、学術論文ではない
まず、マイナスイオンの効果には、科学的な実証データが示されていないという問題があります。
もちろん、マイナスイオンの効果・効能を示した研究報告は過去にもあります。しかし、それらの報告は、アカデミックな学術論文としては認められないものだということです。
認められない理由の一つには、研究の手法の問題が指摘されています。
例えば、被験者自身がマイナスイオン商品を使っていることを意識している上で実験を行っているため、被験者の心理的な影響が結果を左右してしまいます。
「効果がありそうだ」と思って使えば、マイナスイオンは有効であったと回答する確率が高まってしまうのです。それでは信頼の置ける実証データにはなりませんね。
マイナスイオンの研究報告が、アカデミックな学術論文としては認められない理由は、そもそもの報告内容が、統計的なデータ処理に耐えるものではないからです。
発生するイオンが少なすぎる
仮に、マイナスイオンに健康効果があるとします。そのように仮定したとしても、商品から発生するマイナスイオンは、極めて微量なため、人体への影響はないと考えられています。
具体的に、マイナスイオンが機器から発生する量を記すと、1立方センチ当たり1,000~100,000個のイオン濃度と言われています。
数字で見ると大きく見えますが、実際には極めて微量でしかありません。例えて言うと、これは琵琶湖に耳掻き一杯の塩を入れて掻き回した濃度よりも、遙かに薄い濃度なのだそうです。
それで「しょっぱい」と感じる人はいませんね? 同じように、この程度のマイナスイオンの量で、爽快だと感じることはないと考えられます。
マイナスイオンに健康効果があると仮定した場合であっても、その効果を得るには、あまりにも量が少なすぎるのです。
マイナスイオンは存在しない
記事の冒頭でも触れましたが、そもそもマイナスイオンは造語であるため、何を指してマイナスイオンと呼んでいるのか分からないという問題もあります。
繰り返しますが、科学の世界には、マイナスイオンそのものが存在しないのです。
このため、家電メーカーが言っているマイナスイオンと、科学者が考えているイオンは別物であり、この点も話がややこしくなっている原因です。
科学では存在しないものを、科学的に説明しようと試みても、やはり理解を得るのは難しいのですね。
次ページでは、マイナスイオン商品から派生したシャープの「プラズマクラスターイオンの効果」について考察してみます。こちらの商品を持っている人も多いのではないでしょうか?