地底国を見て来たヤンセン父子の話は、地底国や地球空洞説に関連する本でよく紹介されています。
ノルウェー人の漁師ヤンセン父子が北極にある地底国の入り口を通り、地球内部に住む地底人たちの国を見て来た!という驚愕のレポートになっています。
地底人たちは、よく聞かされるような悪の存在ではなく、心優しい巨人族だったというのも興味深い点です。
このヤンセン父子の地底探訪記は1908年、『スモーキー・ゴッド(Smoky God)』として出版されて、当時も大きな話題になりました。日本でも現在、全訳された本が出版されています。
本を読んでみると、地底国に辿り着くまでの経緯や、地底国の様子が詳細に記されている点に驚かされます。
当記事では『スモーキー・ゴッド』に記されている地底世界について、具体的にご紹介します。
北極から地底世界に迷い込んだヤンセン父子
よく言われているように地球は空洞になっていて、内部の中央には小さな太陽が輝いているのでしょうか?
そして古来より言い伝えられている地底国があり、そこには私たち人類と異なる地底人たちが住んでいるのでしょうか?
『スモーキー・ゴッド』は、まさにそのような地底世界を旅行したヤンセン父子のレポートです。
スモーキー・ゴッド—地球内部への旅—翻訳版
『スモーキー・ゴッド』は本当の話か?
『スモーキー・ゴッド』を読み進めていくうちに、実際に地底国を見てきたとしか思えないような描写が続くので、「これは本当の話なのか?」と思わずにいられなくなります。
先に断っておくと、『スモーキー・ゴッド』は現在、文学作品として扱われています。
しかし、この本の訳者が「単なるフィクションと断定することはできない」と、まえがきで書いているほどのリアリティがあるのです。
Wikiの「地球空洞説」によると、「著者のエマーソンは彼ら(地底の巨人国)の首都が本来のエデンの園(のちに「アガルタ」)であると主張した」とあります。
著者のウィリス・ジョージ・エマーソンは(Willis George Emerson 1856~1918年)は、すでに亡くなっているので、この言葉の真意は確かめようがありませんが、実際に地底国の存在を主張していたようです。
とはいえ、地底国や地底人など存在しているはずがないという理由から、現在では作者の創作とされているのでしょうか?
以下、エマーソンが『スモーキー・ゴッド』を出版することになった経緯を、本に書かれている内容から紹介します。
ノルウェー人の老人が打ち明けた秘密
『スモーキー・ゴッド』の著者エマーソンはある日、オラフ・ヤンセンという百歳近いノルウェー人の老人と出会い、二人は二年間ほど親交を深めます。
その後、エマーソンはオラフ老人が臨終との知らせを受け、急いで彼の自宅に駆け付けます。するとオラフは死の間際に、長らく誰にも打ち明けてこなかった秘密をエマーソンに話します。
それはオラフがまだ十代の時、彼の父とともに北極の穴から地底世界に迷い込んだという話だったのです。
なぜそんな重大な話を秘密にしていたのかと言うと、過去に親戚の叔父に打ち明けたところ、精神病院に28年間も入れられてしまったという辛い過去があったためです。
地底国に行った話など誰も信じてくれません。熱心に語れば語るほど、社会不適合者と見なされてしまうのです。
しかし、著者のエマーソンは、オラフ老人が語った話は全て真実だと信じました。オラフは臨終の間際にあっても理知的な態度を崩さず、話には大いなる説得力があったのです。
画像:スモーキー・ゴッド より
オラフは自分の死後、地底国での体験を世間に発表してほしいと、エマーソンに願いました。この真実を知らせれば、古来より伝わっていた北方の地にまつわるミステリーが解明されるのです。
エマーソンは、オラフが残した地底国に関する手記をほぼそのまま掲載し、自分の「まえがき」と「あとがき」を添える形で、1908年に『スモーキー・ゴッド』を出版しました。
ちなみにスモーキー・ゴッドとは、地底国の住民が神のように崇めている地球内部の小さな太陽のことです。
では、ヤンセン父子が見て来たという地底国は、どのようなところだったのでしょうか?
極北の楽園を目指す
オラフ・ヤンセンは、1811年10月27日生まれのノルウェー人です。父のエンス・ヤンセンは漁師です。
1829年4月3日、オラフが19歳のときに父と一緒に漁に出て、その後、ともに地底国を旅することになります。
『スモーキー・ゴッド』には具体的に書かれていませんが、北欧の古い伝承によると、世界の境界線を超えた極北に「トゥーレ」と呼ばれる美しい楽園があるとされています。
ヤンセン父子は漁の途上、まっすぐ北の方向に氷のない不思議な開水域が広がっており、空も気持ち良く晴れ渡っていることから、その楽園を目指すことに決めました。
一本マストの釣り船という頼りない航海でしたが、逆に小船であったがゆえに氷山の間をすり抜けて進むことが可能でした。
地底国の入り口
航海には強烈な寒さを予測していましたが、実際には船が進むにつれて暖かくなり、心地良くなっていきます。
たっぷりと食事をしたヤンセン父子は、航海の疲れから、ぐっすりと眠りについてしまいました。
しかし、目覚めたときには嵐が猛威を振るっていました。ひどい吹雪が船にぶつかり、もの凄い速さで船を走らせるので、一瞬一瞬、転覆する恐れがありました。
水平線を左から右に囲うようにして蒸気のような霧が立ちこめ、海面に近い部分は夜のように暗く、上のほうに向かって雲のように白くなっています。
画像:スモーキー・ゴッド より
恐らく、ヤンセン父子は今、まさに極北にある世界の境界線を超えていたのです。そこは地底世界の入り口であり、船はその穴の縁にいたものと思われます。
滝を滑り落ちるようにして、ヤンセン父子の小船は地球内部に吸い込まれて行きました。
次ページでは、ヤンセン父子が体験した地底世界の様相についてご紹介します。