『スモーキー・ゴッド』の内容を考察
ヤンセン父子は地底世界に迷い込んでから2年半が経った頃、一旦、地上世界に戻ることを決意します。何も知らない母は、息子と夫の行方を心配しているはずです。
ヤンセン父子は、心優しい巨人たちにまた戻って来ることを約束し、彼らから地底の地図や金塊などのお土産をたっぷりともらい、出航します。
ところが、帰りの旅路は来た時よりも過酷となりました。父のエンスは船とともに流氷に呑み込まれてしまい、オラフだけが生き残ります。
オラフは偶然に通り掛かった捕鯨船に救助されるのですが、その経緯も大変興味深く記されているので、興味のある人は『スモーキー・ゴッド』をお読みください!
最後に、『スモーキー・ゴッド』に書かれている内容を改めて考察してみます。
なぜ地球内部の生態系は巨大化したのか?
『スモーキー・ゴッド』では、地底人の身長は3~4メートルもあり、ゾウは30メートル、カメは7~9メートル、森の木々は300メートル、リンゴは人間の頭ほどの大きさもあります。
地底世界の生態系の何もかもが巨大化しているのは、何故でしょうか?
私たちは、本物の太陽で照らされている地上世界のほうが好環境だと考えがちですが、それは違うのです。
地上には、紫外線などの有害な宇宙腺が絶えず降り注いでいます。大気の流れによっても、厳しい気候の環境が形成されています。
しかし、地球内部は分厚い地殻の壁で守られており、安全で快適な環境にあります。雨風が吹きつける家の外よりも、屋内のほうが快適に過ごせるのと同じです。
地球内部にも小さな太陽があるので、充分な熱エネルギーも確保できます。
いわば、地底世界は恒久的なビニールハウスの中にいるようなものなので、植物は発育がよく、それを食べる生き物たちも巨大化していくのは理に適っているのです。
地底世界が先に存在した
『スモーキー・ゴッド』の地底世界には、私たちの世界と一致する地名が幾つも登場します。
例えば、「旧約聖書」の創世記にはユーフラテス川、ピション川、ギホン川、ヒデケル川が記されていますが、それが『スモーキー・ゴッド』にも、そのままの名前で登場します。
二つの異なる世界であるのに、なぜこのような一致が見られるのでしょうか?
それは、この世界の起源は、そもそも地底世界にあるためだと考えられます。地底世界のほうが先に存在しているのです。
ノアの方舟や大洪水の伝承も、実際には地底世界で起きた出来事であり、それが地上の神話にすり替わって伝わっているのかもしれません。
このため、現代の私たちには受け入れがたい巨人伝説なども、地底世界での話と考えれば理屈は通ります。
『スモーキー・ゴッド』は創作か?
『スモーキー・ゴッド』を読み終えると、地底国の存在など信じていなかった人でも、「これは本当の話なのか?」と考えてしまうでしょう。
この本が出版された当時の人々は本当の話だと信じ、出版から百年以上が経った現在でも、この話を真実だと考えている人は数多くいるそうです。
これについては前述した通り、『スモーキー・ゴッド』は現在、古典文学として紹介されています。
とはいえ、著者のウィリス・ジョージ・エマーソン自身は地底国の存在を主張しており、ただの絵空事を創作して書いたとは思えません。
エマーソンは地球空洞説や地底国の存在を研究し、それを人々にも分かるように伝えようと願い、『スモーキー・ゴッド』という作品を書いたのではないでしょうか?
この一冊には地底世界の真実が盛り込まれており、実際にオラフ・ヤンセンのモデルとなる人物もいたのかもしれません。
地球空洞説に懐疑的な人も、『スモーキー・ゴッド』を読むと、さまざまな想像に掻き立てられます。
以前には全訳を読める機会はなかったそうですが、現在は全訳本がありますので、ぜひ一読をお勧めします!
スモーキー・ゴッド—地球内部への旅—翻訳版
↓こちらは『スモーキー・ゴッド』の文庫版(内容は同じ)です。