HAARPが地震兵器ではない根拠
陰謀論では、「HAARP=地震兵器」であると確信的に言われていますが、それについては以下のような様々な反論があります。
スカラー電磁波は存在しない
地震兵器HAARPの陰謀論は、ニコラ・テスラ氏による電磁波の研究が元ネタになっていると考えられています。
しかし、『検証 陰謀論はどこまで真実か』によると、テスラ氏がスカラー電磁波を操作したという事実はないそうです。
テスラ氏が実験でニューヨークの街を「振動」させたという逸話は残されていますが、それは地震ではなく、鉄柱にネジを打ち込んだ音波を発生させていた「騒音」であったそうです。
そもそも地震兵器HAARPに使用されているスカラー電磁波は、仮説の電磁波であって、いまだに検出されていないのです。
電磁波と地震の因果関係
HAARPを地震兵器と考えるならば、そもそも「電磁波で地震を起こせるのか?」という大きな疑問があります。
ちなみに、地震が発生した前後に、上空の電離層に異常が発生したという報告ならば、実際にあります。
このため、地震によって発生した電磁波が、上空の電離層に影響を与えている可能性が考えられるため、電離層と地震波の関係を研究している人たちもいます。
画像:地震は予知できる! 週間前に起こる先行現象を捉えろ より
しかし、だからと言って、「電磁波によって地震が引き起こされた」という因果関係は認められていません。順番が逆だからです。
例えば、ナマズが暴れると地震が起きるという俗説がありますが、仮にナマズが地震を予知できたとしても、ナマズが地震を起こしているのではありません。これは誰でも分かります。
ところが、HARPP、電離層、電磁波、地震兵器などという非日常的な言葉が結び付くと、因果関係を無視して、「世界の大地震は、アメリカの地震兵器HAARPが放射する電磁波によって引き起こされている」という陰謀論が出来上がってしまうのです。
地震兵器の実用化は不可能
仮に、電磁波で地震を起こせると考えても、電磁波が地震発生領域に届くまでには、地下の岩盤や水分にその多くが吸収されてしまいます。
震源が海底の場合には、電磁波のほとんどは海水を温めるのに使われてしまいます。そうなると、それ以上の想像を絶する量の電磁波を放射しなければいけません。
そう考えると、電磁波を使った地震兵器の実用化は不可能と考えるのが普通でしょう。
また、もしも地震を引き起こすだけの電磁波が放射されたとしたならば、地面や海面に地震以外の異常が感知されるはずです。
家庭の電気製品や、テレビ・ラジオ・携帯電話などの電波にも大きな影響を与えます。しかし、そのような異常は報告されていないのです。
そもそもアラスカ州にあるHAARP研究施設から、どうやって大量の電磁波を目標の場所に放射させるのかも不明です。
本当に地震兵器があるならば発表されている
事実確認をしておくと、当然のことながら、アメリカ政府が地震兵器を所有していると発表したことは一度もありません。
もしも地震兵器のような驚異的な新兵器を開発したならば、核ミサイルと同様、所有しているだけでも他国には脅威となり、戦争の抑止力が働きます。
このため、本当に地震兵器を持っているならば、持っていると発表したほうが有利に働くはずです。
そのように考えると、地震兵器の存在を発表していないということは、「実際に持っていない証拠である」という見方もできます。
また、地震兵器を使用する意味としては、敵国への恫喝や報復などが挙げられます。その脅威を敵が知れば、地震兵器を交渉のカードに使えるでしょう。
しかし、今までに「地震兵器を使用した」と名乗り出た国や組織はありません。地震兵器を使用したとしても、それが自然災害にしか見えないのならば、攻撃した意味があるでしょうか?
次ページでは、最後に「地震兵器は陰謀論に過ぎないのか?」について、改めて考察してみます。